【38】定年後の嘱託雇用者の賃金が高いと継続雇用給付を受けられない?

【 Question】

他社からスカウトした技術人材が、まもなく60歳に達します。これまで、破格の高給を支払ってきましたが、他の嘱託社員との見合いで、少し賃金水準を調整したいと考えています。しかし、高給者の場合、雇用保険の高年齢雇用継続給付を受けられないケースもあると聞きます。どのような形で減額が実施されるので しょうか。

 

【Answer】

~賃金と給付の合計額に上限~

定年再雇用者の生活設計は、賃金、雇用継続給付(雇用保険)、年金の3本立てで考えるのが基本です。

高年齢雇用継続給付は、再雇用後の賃金が、60歳到達時等賃金と比べ、どの程度低下したかを基準として金額を算定します(雇保法第61条)。再雇用後の賃金が、60歳到達時等賃金と比べ、61%未満の水準に低下したとき継続給付の額は、再雇用後の賃金に15%を乗じた額となります。75%未満61%以上のときは、再雇用後の賃金に「15%から逓減する率」を乗じます。 (詳しくは高年齢者雇用最適賃金シミュレーションのページを参照ください)

ただし、ご質問にもあるように、高給者については一定の減額措置が講じられます。まず、「支給限度額」が定められています。平成23年度の支給限度額は、344,209円に引き上げられました(改正前327,486円)。

再雇用後の賃金額と継続給付(原則どおりに計算した分)の合計が、支給限度額を超えると、超えた分の金額が継続給付からカットされてしまいます。

次に、60歳到達時等賃金を計算する際にも、上限額が設定されています。60歳到達時等賃金は、高年齢者が「60歳に到達した日に離職したとみなして」計算した賃金日額をベースとします。

賃金日額は、被保険者期間の最後の6ヶ月に支払われた賃金を180で除して算定します(雇保法第17条)。

しかし、賃金日額には年齢層別に上限が設けられています。平成23年度は、60歳以上65歳未満の賃金日額上限15,060円に改定されました。

ですから、仮にお尋ねの技術人材(以下「Aさん」とします)が定年前に月給60万円を受け取っていたとします。単純に賃金日額を計算すると、次のとおりとなります。

600,000円 × 6ヶ月 ÷ 180 = 20,000円

これは上限(15,060円)を超えているので、Aさんの賃金日額は15,060円とみなされ、それを30倍したものが60歳到達時の月給額となります。

15,060円 × 30 = 451,800円

Aさんの再雇用後の賃金が30万円だったとします。現実には賃金は半減(30万円÷60万円=50%)していますが、継続給付の計算上は、次のとおり取り扱います。

300,000円 ÷ 451,800 = 66.40%

ですから、Aさんの雇用継続給付は賃金の低下率が50%ではなく、66.40%(約3分の2)として計算されます。この場合の給付金額は、25,000円強となります。

(2012年1月)

 

 記事投稿日: 2015年07月16日
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