過労死防止についての国の取り組み

business_karoushi1.はじめに

 平成28年10月に厚生労働省から、過労死等防止対策推進法に基づく初の報告書である「過労死等防止対策白書」が公表されました。また、同12月には「『過労死等ゼロ』緊急対策」が取りまとめられるなど、過労死に関する取り組みが進められています。今回のニュースでは、厚生労働省の過労死防止対策についての公表内容を簡単にご案内いたします。

2.過労死等を防止するための対策の進め方について

過労死等の発生要因については、調査研究と並行しながら、防止のための取り組みが進められています。 その取り組みとして、将来的に過労死等をゼロにすることを目指し、短中期には以下の目標を達成する事が掲げられています。  また、今後3年を目途に全都道府県でシンポジウムを開催する等の啓発活動を行うと共に、心身の不調を生じた労働者向けの相談体制を整備することを目指すとしています。

3.「『過労死等ゼロ』緊急対策」について

ア)違法な長時間労働を許さない取組の強化
・新ガイドラインによる労働時間の適正把握の徹底 企業向けに新たなガイドラインを定め、労働時間の適正把握を徹底する
・長時間労働等に係る企業本社に対する指導 違法な長時間労働等を複数の事業場で行うなどの企 業に対して、全社的な是正指導を行う
・是正指導段階での企業名公表制度の強化 過労死等事案も要件に含めるとともに、一定要件を 満たす事業場が2事業場生じた場合も公表の対象と するなど対象を拡大する
・36協定未締結事業場に対する監督指導の徹底

イ)メンタルヘルス・パワハラ防止対策のための取組の強化
・メンタルヘルス対策に係る企業本社に対する特別指導複数の精神障害の労災認定があった場合には、企業本社に対して、パワハラ対策も含め個別指導を行う
・パワハラ防止に向けた周知啓発の徹底 メンタルヘルス対策に係る企業や事業場への個別指導等の際に、「パワハラ対策導入マニュアル」等を活用し、パワハラ対策の必要性、予防・解決のために必要な取組等も含め指導を行う

ウ)社会全体で過労死等ゼロを目指す取組の強化
・事業主団体に対する労働時間の適正把握等について緊急要請
・労働者に対する相談窓口の充実 労働者から、夜間・休日に相談を受け付ける「労働条件相談ほっとライン」の開設日を増加し、毎日開設するなど相談窓口を充実させる
・法令違反で公表した事案のホームページへの掲載

4.おわりに

現在、「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」では、36協定における時間外労働規制の在り方をはじめ、長時間労働の是正に向けた政府の検討に資するよう、我が国における時間外労働の実態や課題の把握を中心に検討が進められており、その論点整理の総論で、企業における以下の対策が必要と論じています。

・誰もが働きやすい環境を整備
・日本の産業・雇用システムの全体構造の改善
・多様な人材の意欲と能力が十分に発揮される労働制度を整備すること
・経営者が時間当たり生産性を意識して改革を行うこと

なお、36協定における時間外労働規制の在り方については、法改正を検討する必要もあると述べています。まだ法改正は先のことになるでしょうが、改正されてから突然労働時間を減らすといっても難しいものです。そこで、まずは前述の求められている点を顧みながら、生産性を上げつつ労働時間を減らせるような施策を考えていくことが求められます。生産性の向上や労働時間の短縮に対する助成金もありますので、活用も視野に入れながら少しでも改善していくことが重要となってくるでしょう。

 記事投稿日: 2017年03月27日
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