【34】解雇通告者と連絡がとれず予告手当を手渡せないとき採るべき手段は?

【 Question】

若手の従業員ですが、最近、遅刻や無断欠勤が多くなって困っています。先日、また遅刻してきたので、注意したところ、プイッと職場から出ていき、そのまま連絡がとれません。解雇予告手当を支払って解雇したいのですが、本人が受け取りに来ない場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

 

【Answer】

~いつでも支払える状態に置く~

解雇予告の除外認定を受けない限り、解雇時には30日前の予告平均賃金30日分の予告手当の支払いが必要です(労基法第20条)。このほか、予告手当の支払いにより、解雇予告の日数を短縮することもできます。たとえば、10日分の手当を支払えば20日前の予告で足ります。

「30日前」の計算をする際には、民法の期間計算の原則が適用されます。民法第140条では、「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は算入しない」と定めています。ですから、通告の「翌日」から数えて30日が経過した時点で期間満了となります。

予告に代えて、手当を支払うときも、この原則に従えば、払った日の翌日から効力が発生するという理屈になります。この場合、予告手当は、少なくとも解雇と同時に支払わなければなりません。

また、手当は賃金ではありませんが、賃金に準じて直接払・通貨払を行うよう指導がなされています(昭23・8・18基収第2520号)。そこで、通貨で直接本人に支払おうとしたけれど、本人が受け取りを拒絶する、または受け取りに来ない場合、予告の効力はどうなるのかという問題が生じます。

受取拒否の場合、一番、確実な対応方法は「供託」です。民法第494条では、「債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済者は供託してその債務を免れることができる」と規定しています。

この「債権者」という部分を「解雇予告を受けたもの」と読み替えれば、そのものズバリの回答となります。供託する場所は、「債務の履行地の供託所」です(民法第595)。供託所は、都道府県法務局の支局等に設置されています。

しかし、現実問題として、そのような手続きを踏むのは大変です。解釈例規では、「通常の賃金その他の債務が支払われる場合と同様に、現実に労働者が受け取り得る状態に置かれれば」よいという立場を採っています(昭63・3・14基発第150号)。

受け取り得る状態とは、次の条件を満たすときをいいます。

①郵送等の手段により労働者あてに発送を行い、この解雇予告手当が労働者の生活の本拠地に達したとき。直接労働者本人の受領すると否と、また労働者の存否に関係がない。
②労働者に解雇予告手当を支払う旨、通知した場合については、その支払日を指定し、その日に本人不参のときはその指定日、また支払日を指定しないで本人不参のときは労働者の通常出頭し得る日。          

 

 (2011年10月)

 

 記事投稿日: 2015年07月15日
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