平成30年度 厚生労働白書が公表されました

business_syougai_syakaijin 平成30年度版の厚生労働白書が7月に公表されました。第1部「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」と第2部「現下の政策課題への対応」の2部構成となっていますが、本稿では例年異なるテーマでまとめられる第1部の内容について概説いたします。

 

1.全ての人が活躍できる社会

第1部の「障害者や病気を有する者の現況と、政府の取り組み」では、障害や病気を有する方などに焦点を当て、障害の特性や病状などの事情に応じ、就労や社会参加を通じて自分らしく生きることができる社会の実現に向け、現状や国民の意識、事例の分析を整理しています。そのうえで、全ての人が活躍できる社会の実現に向けた方向性を示しています。

 

2.障害や病気を有する者などの現状と取組み

障害者の総数は963.5万人(身体障害者:436万人、知的障害者:108.2万人、精神障害者:419.3万人)で、国民のおよそ7.6%に相当しますが、近年は増加傾向にあります。

政府は、「障害者等が希望や能力、適性を十分に活かし、障害の特性等に応じて活躍することが普通の社会、障害者と共に働くことが当たり前の社会を目指していく」としており、その実現のため以下のような施策を実施しています。

障害者雇用率制度

事業主に障害者雇用を義務づけ

障害者雇用納付金制度

雇用義務未達企業から納付金を徴収、達成企業には調整金・報奨金を支給するとともに、各種助成金を支給

障害者雇用に関する助成措置、税制上の支援

雇用保険財源から、雇入れや継続雇用を支援する各種助成を行っているほか、①機械などの割増償却、②事業所税の軽減、③不動産取得税の軽減、④固定資産税の軽減といった税制上の支援措置を実施

病気を有する者について、白書では『難病等(治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者)』を有する難病患者や、広範かつ継続的な医療の提供が必要とされる『5疾病(がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、および精神疾患)』について言及しています。医療技術の進歩により、かつては『不治の病』とされていたこれらの病気でも生存率が向上し、また病気によっては治癒後の経過が良くなり、病気を有しながらも体調や症状などに応じて自立した日常生活や社会生活を営むことが可能となってきています。特に、がん患者については、約半数が勤務を継続しています。概況は下図をご参照ください。

 

■がん患者・経験者の就労状況

 

1近年のがん治療は入院治療から通院治療にシフトしており、働きながら治療を受けられる可能性が高まっています。

しかしながら、治療と仕事の両立支援についての取組状況は会社によって様々であり、やむなく離職する方もまだまだ少なくありません。治療開始前に約40%の人が離職している実態があり、仕事を継続できなかった理由としては、「職場に迷惑をかける」(17.4%)が一番多く、「気力・体力的困難を予測」が(15.9%)、 「両立の自信なし」(15.9%)と続いています。

こうした状況を変えていくためには、労働者の治療と仕事の両立支援に取り組む会社に対する支援や、医療機関などにおける両立支援対策の強化が必要になっています。

治療と仕事の両立支援に関して、会社が活用できるのは、右記のようなものが挙げられます。

 

 3.おわりに

 少子高齢化が進行する我が国では、誰もが活躍できる社会「一億総活躍社会」の実現に向けて政府を挙げた取り組みが行われています。上記の施策を参考にしつつ、「自分たちの会社では何ができるのか」について検討されてみてはいかがでしょうか。

 記事投稿日: 2019年09月18日
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