【08】営業秘密を守るために従業員家族の就職先を申告させたいが可能か?

【 Question】

現在、社内機密の管理体制を見直し中です。本人だけでなく、家族経由で秘密が漏れるおそれも否定できません。「家族がどこの会社に勤めているか」、もっと正確にいえば、「同業他者に勤めていないか」、従業員に申告させるのは可能でしょうか。

 

【Answer】

~秘密保持措置の強化で対応を~

家族の地位・職業等は、従業員の個人情報の中でも、センシティブな(機密に触れる)部類に含まれます。採用時については、「家族の職業などを調査することは、応募者の適正・能力に関係のない事柄を採用基準とすることとなり、不適切」であるため、企業が実施しないようハローワーク等が指導しています。

個人情報保護法では、「個人情報を取り扱うにあたって、その利用の目的をできる限り特定しなければならない」(第15条)と定めています。一般に利用目的として考えられるのは、「家族手当等の決定、社会保険関係、災害補償、育児・介護休業法の適用」などでしょう。

手当の申請等の場合、必要書類の提出を求めますが、「住民票の写しは、画一的に提出を求めないようにし、それが必要になった時点(たとえば、慶弔見舞金が支給されるような場合で、その事実の確認を要するとき等)で、その使用目的を十分に説明の上提示を求め、確認後速やかに本人に返却するよう指導すべき」(平9・2・21基発第105号)という解釈例規が示されています。

機密保持のためという大義名分があれば、会社が家族の職業等に口をはさむ正当な理由となるでしょうか。夫が同業他社に勤めているという理由で、妻を試用期間中に解雇した判例が存在します(ケイズ事件、大阪地判平16・3・11)。判決文では、「仮に秘密が漏えいする恐れがあるのであれば、秘密保持のための適宜の措置をとればいいのであって、解雇の合理的理由とは認められない」と述べています。貴社でも機密保持対策(誓約書の提出等)を強化するのが本筋で、家族情報の提出強要は避けるべきでしょう。

(2010年5月)

 

 記事投稿日: 2015年07月06日
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