定年再雇用と同一労働同一賃金について

teinen_man少子高齢化の進展を背景に、労働力人口が減少しており、各企業にとって労働力の確保が急務となっています。女性や高齢者の活躍推進、外国人材の活用などの他、継続雇用制度もその1つの施策として見直されています。しかし近年、継続雇用制度の内、定年再雇用後の賃金を巡る議論が各方面で繰り広げられておりますので、そのポイントをご案内いたします。

 

1.継続雇用制度とは?

ws000000 平成25年4月1日に改正された「高年齢者雇用安定法」により、65歳までの高年齢者雇用確保措置として①定年引上げ②継続雇用(定年再雇用)制度の導入③定年制度の廃止のいずれかの措置を取るように義務づけられています。

定年再雇用後の雇用形態は「嘱託・契約・パート」が一番多く、次に「正社員」となっています。また、給与水準は下の表のように減少傾向が見て取れます。

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2.同一労働同一賃金とは?

 同一労働同一賃金は、「同じ仕事に従事する労働者は皆、同一水準の賃金が支払われるべき」だという概念のもと、雇用形態などに関係なく仕事の内容等に基づき賃金を決めるという考え方が一般的です。しかし、日本の多様な賃金制度、雇用慣行に十分配慮すれば、外見上同じように見える職務内容であっても、責任や熟練度、成果、所定労働時間数などが異なれば同じ待遇とせず、また「職務遂行能力」や「将来的な仕事・役割・貢献度の発揮期待(人材活用の仕方)」などの要素も加味できるようにしたうえで、「同一の付加価値を企業にもたらすと評価される労働に対して、同じ賃金を払うこと」を許容すべきとして、7月に経団連が提言を出しています。

3.裁判例

【判例①】

正社員には役付手当や賞与などが支払われていたが、嘱託社員には支払いがなかった。また、定年再雇用の嘱託社員と正社員の賃金体系が異なっていたが、職務内容は大きく変わらなかった。そのため定年再雇用の嘱託社員と正社員の間で労働条件に相違があり、同一労働同一賃金の観点より、労働契約法20条(不合理な労働条件の禁止)違反に該当し、定年再雇用の賃金引下げは違法という判決が下った。(長澤運輸事件・東京地裁平成28年5月31日判決)

 【判例②】

定年再雇用された嘱託社員が、正社員当時の給与と大きな差があるとし裁判を起こしたが、従業員は65歳まで安定的な雇用を確保されているという大きな利益があり、従前の再雇用制度と比べ従業員に有利に改正されたものである。そのうえで、嘱託社員の地位は正社員より後退した内容であるが、高年齢雇用安定法の予定する枠組みの範囲内であり、同法に期待される定年後の再雇用の一定の安定性が確保されているため、公序良俗には反しておらず違法ではないという判決が下った。(X運輸事件・大阪高裁平成22年9月14日判決)

上記のうち、長澤運輸事件は東京高裁に控訴されており、今後の判決が注目されています。

なお、政府は同一労働同一賃金について、ガイドライン案を年内にもまとめる方針としていますが、弊所におきましても情報収集の上、各企業様における対応方法等について適宜ご案内してまいります。

 記事投稿日: 2016年10月11日
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