ハラスメントの現状と防止措置について

厚生労働省は、毎年12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、ハラスメントのない職場環境を作る気運を盛り上げるための、集中的な広報・啓発活動を実施しています。今回は、パワーハラスメント発生の現況と、来年4月に全面義務化されるハラスメント防止措置の実施を見据えた東京労働局の取組についてご案内いたします。

1.「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数

 都道府県労働局などの総合労働相談コーナーに寄せられる民事上の個別労働紛争の相談内容の中で、「いじめ・嫌がらせ」は9年連続で最多となりました。

大企業は、令和2年6月にハラスメント防止措置が法律上義務化されていることから、「いじめ・嫌がらせ」ではなく「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」として別に計上されおり、過去の相談件数と単純比較はできませんが、件数は高止まりの様相を呈しています。相談全体に対する割合は、おおむね4分の1を占める状況が続いており、職場におけるハラスメントの防止対策は各企業において喫緊の課題と言えそうです。

2.東京労働局の自主点検要請

 来年4月から中小企業にもパワーハラスメントの防止措置が義務化されることを受けて、東京労働局では、現時点における取り組み状況を確認するための「自主点検票」を作成し、一部の中小企業に対し点検を要請しました。

「自主点検票」は、東京労働局のホームページからダウンロードすることが可能となっています。また、取り組みが未了の事項については、取り組む際に参考となる「自主点検解説動画」や資料なども合わせて公開されていますので、準備を始める企業は活用してみてはいかがでしょうか。

3.おわりに

 過日、国内自動車メーカーの男性が自殺した事件で、パワーハラスメントや過重労働が自殺の原因として、労災を認めた高裁判決がニュースになりました。同判決では、労災認定の基準として新設された「パワーハラスメント」の項目「社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃」を考慮して労災と認定しています。

何ら対策を講じない「パワーハラスメントの放置」は、企業の責任という位置づけが明確になりました。経営上の重要課題と認識して、職場のハラスメントの撲滅に取り組みましょう。

 記事投稿日: 2021年12月28日
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