治療と仕事の両立支援について
近年では診断技術や治療方法の進歩により、「不治の病」とされていたがんなどについても「長く付き合う病気」に変化しました。このことから疾病を抱えた労働者について、治療と仕事の両立を支援する取り組みが必要となる場面は、更に増加することでしょう。本稿では治療と仕事の両立支援の導入と改正された傷病手当金の支給期間の見直し等、国の支援策の概要をご案内します。
1.治療と仕事の両立支援の進め方について
厚生労働省では、治療と仕事が両立できるようにするための取組などをまとめた「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」を策定しています。これには、両立支援の留意事項から進め方、使用する様式例や疾病ごとの留意事項まで、幅広く支援についての情報が記載されています。本稿ではそのうち、両立支援の進め方の大枠部分だけ抜粋しお伝えいたします。
■両立支援の進め方
① 両立支援を必要とする労働者が、支援に必要な情報を収集して事業者に提出
労働者からの情報が不十分な場合、産業医等又は人事労務担当者等が、労働者の同意を得た上で主治医から情報収集することも可能
② 事業者が、産業医等に対して収集した情報を提供し、就業継続の可否、就業上の措置及び治療に対する配慮に関する産業医等の意見を聴取
③ 事業者が、主治医及び産業医等の意見を勘案し、就業継続の可否を判断
④ 事業者が労働者の就業継続が可能と判断した場合、就業上の措置及び治療に対する配慮の内容・実施時期等を事業者が検討・決定し、実施
⑤ 事業者が労働者の長期の休業が必要と判断した場合、休業開始前の対応・休業中のフォローアップを事業者が行うとともに、主治医や産業医等の意見、本人の意向、復帰予定の部署の意見等を総合的に勘案し、職場復帰の可否を事業者が判断した上で、職場復帰後の就業上の措置及び治療に対する配慮の内容・実施事項等を事業者が検討・決定し、実施
特に、私傷病である疾病について労働者からの申出を受けることが起点となるため、申出をしやすい環境を整備することが重要です。そのためには、事業場内ルールの作成と周知、労働者や管理職等に対する研修による意識啓発、相談窓口や情報の取扱方法の明確化などを行うことが大切になります。
2.傷病手当金の支給期間の改正について
労働者が活用できる支援制度として、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障する健康保険の「傷病手当金」がありますが、がん治療のために入退院を繰り返す場合や、がんが再発した場合などに、柔軟に制度を利用できるように取扱いが変わります。
令和4年1月から「支給期間の1年6か月のうち、出勤に伴い不支給となった期間がある場合、その分の期間を延長して受けられる」ようになります。
3.両立支援についての助成金
企業が活用できる支援制度としては、以下の「治療と仕事の両立支援助成金」があります。詳細は独立行政法人労働者健康安全機構のホームページをご確認下さい。
助成金名… 治療と仕事の両立支援助成金【環境整備コース】
概 要… 両立支援コーディネーターの配置と、両立支援制度の導入を新たに行った場合に、費用の助成を受けられます。
助成金名… 治療と仕事の両立支援助成金【制度活用コース】
概 要…両立支援コーディネーターを活用し、両立支援制度を用いた就業上の措置を、対象労働者に適用した場合に、費用の助成を受けられます。
4.さいごに
本稿でお伝えしたガイドラインのほか、厚生労働省では治療をしながら働く人を応援する情報ポータルサイト「治療と仕事の両立支援ナビ」を開設しています。そのサイト上では、両立支援にまつわる様々な情報のほか、参考となる企業の取り組み事例なども紹介されています。
誰しも疾病に罹患する可能性のあるなかで、両立支援体制の整備は従業員の安心感にもつながります。転ばぬ先の杖として前述の情報なども参考にしながら、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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