同一労働同一賃金に関する最高裁判決

10月13日、15日に正社員と非正規社員の待遇差(いわゆる同一労働同一賃金)について、3社の最高裁判決が出されました。争点となった労働契約法旧第20条は、現在のパートタイム・有期雇用労働法第8条に受け継がれ、大企業は今年の4月から、中小企業は来年の4月から施行となっています。このことから、本裁判は今後の同一労働同一賃金についての判断基準として世間的にも大きく注目されました。
本稿では、判決を考えるにあたっての基本的な考え方をお伝えしながら、3社の判決の内容を概説いたします。

1.基本的な考え方

労働契約法旧第20条では、以下の通り記載されています。

■労働契約法旧第20条抜粋
(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)

業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

この通り、不合理であるか否かの判断は、①職務の内容(業務の内容および責任の程度)、②職務の内容および配置の変更の範囲、③その他の事情を考慮することになります。これは、おおむねパートタイム・有期雇用労働法第8条の記載と同じとなっております。

なお「その他の事情」について、労働契約法に関する通達では、「合理的な労使の慣行などの諸事情が想定される」としています。その点、パートタイム・有期雇用労働法第8条においては、「当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるもの」と、より明確に記載がなされていますが、どちらも企業ごとに個別具体的に判断することとされています。

2.最高裁判決の内容

今回の3社の最高裁判決を簡潔にまとめると以下のとおりです。

事件名 対象待遇 判断
大阪医科大学事件賞与 不支給は不合理 ではない  
業務上の疾病による 欠勤中の賃金  
メトロコマース事件   退職金
日本郵便事件  扶養手当 いずれも不合理
年末年始勤務手当
夏期冬期休暇
祝日給
病気休暇

賞与・退職金については、「職務内容等に違いがある」としながら、「待遇の趣旨を個別に考慮」した結果、「不支給は不合理ではない」と判示しています。

しかしながら、賞与・退職金の不支給を全面的に肯定しているわけではない点は留意すべきです。特に退職金については、「不支給が不合理となる場合はあり得る」との補足意見や反対意見も述べられています。支給の目的や要件次第では、不支給が不合理とされる可能性は十分にあることから、賞与や退職金については、その意味合いを改めて見直してみるとよいでしょう。

反面、日本郵便事件で争われた手当などは、「職務内容等に違いがある」としながらも、「待遇の趣旨を個別に考慮」した結果、「不支給は不合理」と判示しています。

例えば、扶養手当については、「長期にわたり継続して勤務することが期待されることから、その生活保障や福利厚生を図り、扶養親族のある者の生活設計等を容易にさせることを通じて、その継続的な雇用を確保するという目的」を踏まえ、「本件契約社員についても,扶養親族があり、かつ、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、扶養手当を支給することとした趣旨は妥当するというべき」としました。また、年末年始勤務手当については、「勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対価としての性質」「従事した業務の内容やその難度等に関わらず、所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件とするものであり、その支給金額も、実際に勤務した時期と時間に応じて一律である」という性質、支給要件・支給金額を考慮し、「本件契約社員にも妥当するものである」としました。

4.おわりに

今回の3社の判決を見ると、賞与・退職金のように基本給との関連が強いものについては、経営判断も含めて合理性を判断され、一方、諸手当のように支給の趣旨・目的が明確なものについては、企業ごとの趣旨・目的に則ってシンプルに合理性を判断なされているようです。
まずは、今回の判決を考慮しながら、社内の非正規社員に関する現行制度に不合理な点がないか確認してみることが肝要です。

 記事投稿日: 2020年12月25日
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