本年度の助成金の動向

 厚生労働省の助成金は年度当初に改定が行われますが、今年度の助成金のポイントは、働き方改革を支援するための助成金の追加と不正受給対策の強化となっています。今回は幾つかの助成金をご紹介しつつ、合わせて厳しくなった不正受給対策についてご案内します。

1.働き方改革を支援する新しい助成金

人材確保等支援助成金の新コースとして『働き方改革支援コース』が追加されました。この助成金は、中小企業の時間外労働等の削減の取り組みに対して経費が助成される「時間外労働等改善助成金」の内、以下のコースを受給した企業を対象としています。次に「時間外労働等改善助成金」と「人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)」について概要をご案内します。

  • 時間外労働等改善助成金
    • 時間外労働上限設定コース
      時間外労働の上限設定を行った場合に受給できます。
      受給条件…
      1. 時間外労働時間数で月45時間以下かつ、年間360時間以下に設定
      2. 時間外労働時間数で月45時間を超え月60時間以下かつ、年間720時間以下に設定
      3. 時間外労働時間数で月60時間を超え、時間外労働時間数及び法定休日における労働時間数の合計で月80時間以下かつ、時間外労働時間数で年間720時間以下に設定
        (申請受付:2019年11月29日まで)
    • 勤務間インターバル導入コース
      勤務間インターバルを導入した場合に受給できます。
      受給条件…
      1. 新規に所属労働者の半数を超える労働者を対象とする勤務間インターバルを導入すること
      2. 対象労働者の範囲を拡大し、所属労働者の半数を超える労働者を対象とすること
      3. 所属労働者の半数を超える労働者を対象として、休息時間数を2時間以上延長して、9時間以上とすること。
        (申請受付:2019年11月15日まで)
    • 職場意識改善コース
      年次有給休暇の取得促進、所定外労働の削減等を推進した場合に受給できます。
      受給要件…
      1. 病気休暇や教育訓練休暇等、特定の特別休暇の何れか1つ以上を全ての事業場に新たに導入すること
      2. ①を達成した上で、労働者の月間平均所定外労働時間数を5時間以上削減させること
        (申請受付:2019年9月30日まで)

2.不正受給対策の強化

以前から、雇用関係助成金の不正受給に対しては、不正内容・事業主名などの公表や向こう3年の支給停止、悪質な場合には刑事告発などの対策がなされてきましたが、それらに加え、本年度からは以下の対策も開始されました。

本年度から労働時間把握の義務化と時間外労働の上限規制が始まりました(上限規制の中小企業適用は2020年4月1日から)。今年度の助成金を適正に活用し、負担を軽減しながら早めに対応することを検討されてみてはいかがでしょうか。

 

  1. 不正受給の抑止強化
    不正受給の返還に際し、現在、元本と延滞金を請求しているところ、新たに不正受給額の20%に相当する額以下の金額納付を命ずることができる
  2. 不支給期間の延長・対象の拡大
    不正受給を行った事業主に対する不支給期間を現在の3年間から5年間に延長するとともに、不正受給を行った事業主の役員等が他の事業主の役員等となっている場合は、当該他の事業主に対しても、5年間雇用関係助成金を支給しない
  3. 不正を行った社会保険労務士、代理人および職業訓練実施者への対応
    連帯債務者として不正受給の返還請求、氏名の公表、および5年間の助成金申請を不可とする

 

 記事投稿日: 2019年06月05日
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