賃金不払残業について
8月10日、厚生労働省は平成29年度に賃金不払残業で是正指導した結果を公表しました。それによると、是正企業数・対象労働者数・支払われた割増賃金合計額のいずれもが前年度比で増加しています。今回は公表された内容を紐解きながら、法改正等で見込まれる労務リスクについてお伝えいたします。
1.公表の概要
今回公表された内容は、労働基準監督署による監督指導の結果、平成29年4月から翌年3月までの間に不払だった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取り纏めたものです。公表資料から『過去10年分の経年比較』と『業種別比較』のグラフを、それぞれ抜粋しておりますので、ご参照ください。
是正支払額は昨年度が飛びぬけて高くなっていますが、これは年度内に大手運送会社の支払いが当該年度にあった影響だと考えられます。
ただ、仮に運輸交通業を除外しても、一昨年度の是正支払額を上回っており、全般的に支払額が膨らんでいます。また、対象労働者数や企業数も同様に、一昨年度の数値を上回っており、監督指導による是正支払そのものの規模が大きくなった事が伺えます。
2.問題となった事例
公表資料で例示された事案の中には、労働者から『タイムカード打刻後の作業指示』や『賃金未払残業』について労働基準監督署に直接申告があったもののほか、インターネット上の監視情報を受けて労働基準監督署が立入調査を実施したものもあります(平成27年度以降、厚生労働省の委託事業により、ネット上の賃金不払残業などの書き込み等の情報を監視・収集する取り組みを行うと共に、当該情報に基づき労働基準監督署は必要な調査等を行っています)。
3.おわりに
今後は働き方改革関連法の成立により、客観的な方法で労働時間の状況の記録を作成し、三年間保存することが必要になりました。また、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の時季指定など、これからますます労働時間を適性に管理していくことが求められていきます。
そして、月60時間を超える時間外労働に係る50%の割増賃金率は中小企業には猶予されていましたが、平成35年4月1日に廃止されることが確定しており、長時間の時間外労働を行うことによるコストの増加が見込まれています。 このような労務リスクを低減するためには、自社の労働時間管理が適正に行われているか、そして現状の時間外労働を削減する方法はないか、逐次確認し検証を重ねていくと良いでしょう。
記事投稿日: 2018年10月23日------------------
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