地域別最低賃金の改定について
厚生労働省から平成29年度の地域別最低賃金の改定額が公表されました。これを受けて、9月30日から10月中旬までに全都道府県で順次改定額が発効されます。今回のニュースでは、最低賃金の概要と改定の推移、会社が注意すべき点について取り上げます。
1.最低賃金の概要
「最低賃金」とは、最低賃金法に基づき、国が賃金の最低限度を定めるものです。その額を下回る賃金を定めた場合は、労使合意の上で定めたとしても無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
最低賃金は時間額で定められており、時間給以外で賃金を定めた場合は、臨時の手当や賞与、時間外・休日割増賃金等を除いた上で、所定の方法で時間額に換算して、最低賃金額と比較することになります。
また、最低賃金には、各都道府県別に定める地域別最低賃金と、特定の産業について定める特定(産業別)最低賃金とがあり、いずれか高い方が適用されます。
2.平成29年度の改定額と近年の改定額推移
今回の改定額は、全国加重平均額で848円(前年度比25円増、引上げ率3.03%)となり、各都道府県で22~26円の増額となっています。
近年の改定額推移は以下の通りで、引上げ率でみると昨年度から2年連続で3%以上の増加となりました。このことについては、「(最低賃金を)年率3%引き上げて1,000円を目指す」とする政権の意向が反映していると考えられます。
3.会社が注意すべき点
最低賃金の改定は、毎年8月頃に全ての都道府県分の額が公表され、9~10月頃に発行します。もし、賃金テーブルの下限額を最低賃金程度の水準として定めているのであれば、改定が行われる時期には最低賃金割れを起こさないか注意する必要があります。
なお、違反している企業の大半は、認識不足が原因で、最低賃金未満の支払いをしてしまっています。平成20年12月に厚生労働省が公表した『平成20年1月~3月、7月の地域別最低賃金の履行確保に係る監督指導結果』では、地域別最低賃金額以上を支払っていない理由について、「適用される最低賃金額を知らなかった」(26.9%)、「最低賃金額改定後に賃金改定をしていなかった」(19.3%)「賃金を時間額に換算して比較していなかった」(11.7%)の3つが全体の約6割を占める旨を報告しています。
しかし、違反時のデメリットは会社にとってかなり大きなものとなります。最低賃金以下の賃金額しか支払っていない場合、先述のとおり最低賃金との差額を支払わなければならないほか、地域別最低賃金に違反する場合は50万円以下、特定(産業別)最低賃金に違反する場合には30万円以下の罰金が課せられる可能性があります。また、本年5月から開始された労働関係法令違反の企業名の公開により、違反内容と企業名が厚生労働省のホームページ上で掲載されるリスクもあります。
3.おわりに
最低賃金は、基本的には毎年増額改定が行われており、特に本年は平成14年度以降で最高額の引上げになるなど、企業の人材に対する費用負担も年々大きくなってきています。また、昨今では労働力不足から、人材を確保するために賃金を引き上げざるを得ない状況にもなっています。
厚生労働省では、賃金の引き上げに苦慮する中小企業に向けて、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げた場合に受給できる『業務改善助成金』により支援をしています。最低賃金への対応から助成金の申請についてご相談がございましたら弊所までお気軽にご相談ください。
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