個別労働関係紛争を解決する制度
去る6月8日、厚生労働省より「平成27年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が公表されました。これによると、総合労働相談の件数は8年連続で100万件を超え、高止まりの状態が続いています。また、民事上の個別労働紛争の相談内容は「いじめ・嫌がらせ」が66,566件と4年連続で最多となっていますが、下表のように、「解雇」「雇止め」「退職勧奨」「自己都合退職」など、雇用終了に関する紛争を足し上げると約37%と、かなりの割合を占めることとなりますので、紛争リスクを回避するためには、注意すべきところです。そこで、今回は個別労働関係紛争を解決する制度の概要について、雇用終了時の事例を挙げながら、お伝えしてまいります。
1.個別労働関係紛争解決制度
個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルの未然防止や早期解決を支援するもので、「総合労働相談」「助言・指導」「あっせん」の3つの制度があります。
・総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談
未然防止・早期解決のため、労働者・事業主からの相談に専門の相談員が対応するものです。
・都道府県労働局長による助言・指導
都道府県労働局長が、紛争当事者に対し問題点を指摘し、解決の方向を示すことにより、紛争当事者の自主的な紛争解決を促進するものです。
・紛争調整委員会によるあっせん
弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家により組織された紛争調整委員会が、双方の主張の要点を確かめ、双方から求められた場合には、両者に対して、事案に応じた具体的なあっせん案を提示するものです。
2.労働審判手続
労働審判官(裁判官)1人と労働関係に関する専門的な知識と経験を有する労働審判員2人で組織された労働審判委員会が、個別労働紛争を原則として3回以内の期日で審理し、適宜調停を試み、調停による解決に至らない場合には、事案の実情に即した柔軟な解決を図るための労働審判を行うという紛争解決手続です。
3.民事訴訟
権利関係の当事者が権利主張の内容を特定して訴訟の開始を申立てることによって開始されます。裁判所は当該訴え以外の事項について裁判することは許されず、当事者は、訴訟手続中も、訴えの取り下げや請求の放棄・認諾、和解によって訴訟を終了させることができます。
〇雇用終了に関する紛争の解決状況
ここで、前述した雇用終了に関する紛争ついて「あっせん」「労働審判」「裁判」を行った場合に、どれほどの解決金額や期間がかかるのかについての調査結果を下記にご案内します。紛争の内容までを比較しているものではないため、単純比較はできないところですが、紛争がもつれると、解決までの期間が長く解決金額も高額になるとお考えいただいても間違いないでしょう。
〇おわりに
ここまで、個別労働関係紛争の解決制度についてご案内してきましたが、制度の利用は、得てして労使共に疲弊する結果になることが多いものです。まずは、労使間の相互理解・相互信頼の醸成を図ることは元より、紛争を未然に防ぐべく、適法な規定が適正に運用されているか、今一度確認してみることをお勧めいたします。
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