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当社では、遅まきながら社内分煙を実施し、事務所の一角に喫煙コーナーを設けました。たばこを吸わない社員には好評ですが、なかには「喫煙を口実に、専用コーナーで時間を潰しているだけ」の社員も見受けられます。休憩とみなし、賃金カットを実施すべきという意見もありますが、法的にいかがでしょうか。
〜実務的には困難が山積〜
社内禁煙・分煙は時代のすう勢で、厚生労働省の「平成19年労働者健康状況調査」によると、喫煙コーナーを設置している事業場は全体の50.2%を占めています。「職場における喫煙対策のためのガイドライン」(平15・5・9基発第0509001号)の見直し等も検討されています。
従業員が喫煙コーナーにたむろし、時には談笑を楽しんでいる光景を見ると、経営者・管理職として心中、穏やかざるものがあるでしょう。だらだらと仕事した結果、残業時間が増えるとすれば、なおさらです。
しかし、働いていないから、単純に休憩扱いできるかといえば、そう簡単ではありません。休憩に関しては、「労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間以上」と規定されています(労基法第34条)が、分割については制限はありません。しかし、「休憩時間とは単に作業に従事しない手待ち時間を含まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意である」(昭22・9・13発基第17号)と解されています。
喫煙時間を休憩扱いするためには、あらかじめ「休憩の与え方」をきちんと定め、その時間中は「基本的には、仕事の指示を出さない」という形で運用する必要があります(一斉付与の原則が適用される業種では、その点にも配慮が必要)。必然的に、午前・午後に1回ずつ、5分の休憩(非喫煙者も同時に休む)を取るといった規定にならざるを得ません。
しかし、これは現実的ではないでしょう。ヘビー・スモーカーたちは、もっと自由に喫煙タイムを取れるよう求めるはずです。「それがダメなら、ひと思いに全面禁煙にしてくれ」などど、開き直るかもしれません。
休憩扱いがムリとすれば、労働時間扱いするほかないかといえば、法的にはそうではありません。ノーワーク・ノーペイの原則に基づき、私用外出などと同様に、不就労時間に対応する賃金をカットするのは可能です。
そうはいっても、細切れの喫煙タイムを誰が把握するかという問題が残ります。チェスの試合で使うような時計を用意するのも、大人げない対応です。
ひるがえって考えると、分煙実施前は、各自が自分のデスクに座って、適宜、喫煙タイムを取っていたわけです。そちらは労働時間で、席を立てば不就労時間というのは、論理が一貫しません。結局、「分煙コーナーの節度ある利用」を経営トップが呼びかけ、管理職が厳正に取り締まるのが一番効果的な対応といえそうです。
(2010年6月)
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