長時間労働削減対策の取組状況

政府は、平成32年までに、週の労働時間が60時間以上の労働者の割合を5%以下にする目標を立てていますが、社会的な長時間労働削減の潮流を受けて、様々な施策を打ち出しています。
そのような中で平成28年4月1日、長時間労働削減推進本部から、これまでの長時間労働削減対策についての監督指導結果を含む取組状況と、今後の法規制の執行強化について公表されました。そのポイントを以下の通りご紹介いたします。

1.長時間労働削減対策取組状況
①月100時間超の残業が行われている事業場等に対する監督指導の徹底
○監督の結果、違反・問題等が認められた事業場に対しては、是正勧告書等を交付し、指導
○法違反を是正しない事業場は送検も視野にいれて対応(送検した場合、企業名等を公表)
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※時間外・休日労働協定(36協定)なく時間外労働を行っているもの、36協定で定める限度時間を超えて時間外労働を行っているものなど。

②監督指導・捜査体制の強化
過重労働事案であって、複数の支店において労働者に健康被害のおそれがあるものや犯罪事実の立証に高度な捜査技術が必要となるもの等に対する特別チーム「過重労働撲滅特別対策班」(通称「かとく」)が新設され(平成27年4月~)東京労働局・大阪労働局に設置されました。これまでに全国展開する3企業について書類送検を実施しています。
※東京かとく:小売業(27年7月、28年1月)、大阪かとく:飲食業(27年8月)

③過重労働解消キャンペーンの重点監督
平成27年11月の「過重労働解消キャンペーン」では、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場等に対して重点監督を実施しています。
※5,031事業場に対し実施、3,718事業場(73.9%)で労働基準関係法令違反が認められたため、是正を指導。
その他にもインターネット上の求人情報等を監視・収集し、労働基準監督署による監督指導等に活用するなどの取組みを行っています。

 

2.法規制の執行強化
①重点監督対象の拡大
これまで月100時間を超える残業が疑われる事業場を対象としていましたが、今後は、月80時間を超える事業場も対象とし、年間1万事業場から2万事業場(試算)へと重点監督対象の拡大を行う予定です。

②監督指導・捜査体制の整備
現状では、東京労働局・大阪労働局のみに「過重労働撲滅特別対策班」(通称「かとく」)が設置されていますが、今後は、厚生労働省内に「過重労働撲滅特別対策班」(通称「本省かとく」) を新設し、企業本社への監督指導の他、労働局の行う広域捜査活動を迅速かつ的確に実施できるよう、労働局に対し必要な指導調整を行う予定です。
また、47局全ての労働局に、長時間労働に関する監督指導等を専門に担当する「過重労働特別監督監理官」を各1名配置し、以下の対策を実施することになりました。
・問題業種に係る重点監督の総括(企画・立案・実施)
・月80時間超の残業のある事業場に対する全数監督の総括
・本社監督の総括(問題企業の把握分析・実施・調整・指導)
・夜間臨検の実施・調整・長時間・過重労働に係る司法処理事案の監理等

 

03この他にもトラック業界、IT業界など長時間労働が疑われる業界には、業界団体や関係者、関係省庁と連携した取り組みが行われることとなっています。
以上を見るに、過労死等防止対策推進法をもとに、長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導の強化が、より一層強まっているのが分かります。
今では英語の辞書にまで「KAROSHI」という言葉が掲載されるほどに、「過労死」という言葉は知れ渡りました。長時間労働に起因する過重な物理的・心理的負荷による労働災害は、企業の安全配慮義務違反による労働者等への賠償金の支払い以上に、社会的な責任が問われます。長時間労働が恒常的に行われている場合には、適正な労働時間管理を行っていく必要があるでしょう。

 記事投稿日: 2016年05月16日
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