「働き方改革実行計画」の概要と、注目を浴びる「労働時間の上限規制」

jikosyoukai_businessman平成29年3月28日、政府は長時間労働を罰則付きで規制することなどを柱とした「働き方改革実行計画」の政府案を公表しました。4月7日には厚生労働省の労働政策審議会の労働条件分科会において具体的な議論が開始されており、年内の国会にはこれを基にした労働基準法の改正案が提出されると考えられます。本ニュースでは実行計画の全体像と、目玉である労働時間の上限規制についてお伝えいたします。

 

1.働き方改革実行計画の全体像

本計画案は『働き方改革実現会議』で議論された9つの分野について具体的な対応策とロードマップを示したものです。ここでは、全体像の把握として、下記表のとおり検討テーマと対応策についてご案内いたします。

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2.労働時間の上限規制について

本計画のなかでも、最も注目を集めるのは、長時間労働是正の対応策として提示された罰則付き時間外労働の上限規制です。

時間外労働の上限自体は、原則として、これまでと同様(1ヵ月あたりの残業時間の上限は45時間、1年間で360時間)になります。しかし、現在は労使間で36協定を締結する際に『特別条項』を付けていれば、「臨時的に、限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合には、従来の限度時間を超える一定の時間を延長時間とすることができる」とされており、使用者は1年の半分を超えない範囲内で、限度時間を超える時間外労働をさせることが可能です。しかも、その際の上限時間については、労使当事者間の自主的な協議で決定することができてしまいます。

しかし本計画では、労使間で合意があった場合でも残業時間は年720時間まで、さらに1ヶ月あたりでは休日出勤を含んでも『2~6ヶ月の平均で月80時間未満』、ないし『単月で月100時間未満』を守らなければならなくなり、違反した場合は罰せられることが示されています。

なお、上述の内容を織り込んだ労働基準法の改正案が、年内の国会に提出されることが予想されていますが、施行にあたっては十分に周知徹底する期間を設けて、段階的に施行していくことが示されています。

 

3.さいごに

 罰則付きの労働時間の上限規制は、施行から70年を経過した労働基準法の歴史の中で初めてのことで、働き方改革実現会議が自称するように「歴史的な大改革」であることは間違いないでしょう。しかし、月100時間の残業は、脳・心臓疾患の発症と過重労働時間との関連性が強いとされる『過労死ライン』でもあり、野党からは批判も出ているようです。

また、上限規制に抵触するという以前に、効率的な働き方を実現し労働時間を削減することは、人口減少下にある我が国の喫緊の課題にもなっています。

働き方改革の実現に向けてロードマップが組まれた10年の間に、関連法の改正等を通じて、前ページの表に記載の「対応策」が順次具体化していくことになると推察されますので、これからも、関連する法改正の情報等をつぶさに追いかけながら、適時ご案内してまいります。

 記事投稿日: 2017年05月11日
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